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グレイフェイシアの、まっすぐさが愛おしかった。
「いいえ。ただ、王には、気付かれないようにしてください」
「分かったわ!こっそりね!」
ラルは、グレイフェイシアの額に口付けて、身を起こした。
「それでは、俺は行きます。また、明日」
グレイフェイシアは、赤くなって額に手をやった。
自分がしたのとは違う、口付けだと思った。
ラルを見送って、胸の鼓動が高いことに気付く。
とても幼い、ときめき。
結婚するのだという現実とは、かけ離れていた。
自分は、恋などではなく、ただラルを手に入れたかっただけなのだと知った。
子供のような独占欲。
アルシュファイド王国で、ラルと向き合うことになって、恋が始まったのだ。
まだ自分は、異能開発事業同様、そちらのことでも、入口に立ったばかりなのだ。
どうなるのだろう。
こんな小さな、ときめきにさえ、翻弄されているのに、このままラルのことで心が満たされたら、どうすればよいのか、判らなくなる。
動揺したけれど、心はとても温かくて、幸せだった。
夕闇が、窓の外を覆っていたけれど、その温かさは、部屋に点された明かり同様、グレイフェイシアの心を照らした。
とても、明るく。
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