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市を西側へ抜けると、食品を売っている、きちんとした建物の店が多くあり、そこを過ぎると、金物や家具などの、職人の作業場が多くあった。
そこまで歩くと疲れてしまい、休む場所を求めたが、アルシュファイド王国にあったような、喫茶店や甘味亭はないようだった。
中市まで戻ると、腰掛けて茶を飲める店があったので、そちらで穀茶を飲んで、ひと休みする。
落ち着くと、同行していたボーリンに、この辺りには、よく来るのかと聞いてみた。
「いいえ、そんなに頻繁には来ません。ただ、お城に上がる前に、この辺りは、よく歩きました。この中市の東側にお城があって、北には民家、西側は食品の店と職人の作業場、西南には、少し安めの宿と酒場が軒を連ねています。南に少し行くと、別の宿や食堂がある通りに出ます。中央広場の西通りです」
「ええっと…中央広場の東側は見ていないのよね」
「中央広場の東側は、集合住宅地です。もう少し離れると、ニーリィの家があります。お城を中心にすると、南側に中央広場、西側にこの中央市、東側に城に仕える者たちの民家、北側に騎士たちや大臣たちの家といった感じです」
「んー、なんとなく判ったわ。色々見て落ち着いたし、明日はお父様に見てもらえるように、書類の整理をしましょう」
ミスリーが頷いて、それから言った。
「その書類整理ですが、もう1人秘書官を配属してくださるように、ジェファー様にお願いしてもよろしいでしょうか」
「ええ、構わないわ。あらでも、机が足りないわね」
「ありがたく存じます。それは、あとでも問題ありません。3人までは、増やす必要があるかもしれませんので、予めご了承いただければ、幸いです」
「すぐに増やさなくてもいいの?」
「まずは様子を見て、何に人手が必要か、具体的に説明しなければなりません。王女様のお考えが進めば、揃えなければならない書類も増えるのは、明らかではあるのですが、まだ確定していないことが多いので、具体的な事柄を示せません」
「そう。では、それについては任せるわね。そろそろ城に戻りましょう。明日、何をするか、少し考えたいわ」
グレイフェイシアたちは席を立ち、シャリーナ城の西門から、歩いて城に入った。
仕事部屋である玻璃の間に入ると、グレイフェイシアは、明日、自分がすべきことを帳面に並べた。
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