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「はい。土地区画整理を行うと、現在ある建物は移転する必要が出てきます。移転先は国が調えますが、民にとっては負担に違いありません」
「そんなこと、気付きもしなかったわ…」
衝撃を受けているグレイフェイシアに、ジェファーは言った。
「そのようなことをお教えするために、秘書官はおります。今後、王女殿下ご自身の手で計画をお立てになるとき、お使いいただきたく存じます」
「私では、色々と至らないのね…」
ジェファーは頭を下げて言った。
「恐れながら、あちらこちらに都合を付けるのは、私どもの仕事にございます。王女殿下には、私どもに進むべき道を示していただければ、幸いにございます」
「あなたたちの、仕事…」
「はい。私どもは、国をどのように動かすべきか、論じる立場にはございません。ただ、国のために動いておられる国王陛下を信じるだけにございます。王女殿下のなさることも、国王陛下のご意思に沿うものと信じております。王女殿下が示される道ならば、より進みやすくなるよう、尽力させていただきたく存じます」
グレイフェイシアは、背筋が伸びるのを感じた。
自分は、人を動かす立場にいるのだ。
それも、信頼の下に。
「私…もっと、たくさんのことを、知らなければならないわね」
知って、正しく人を動かさなければならない。
「お手伝いさせていただければ、幸いにございます」
「ええ、お願いするわ。取り敢えず、これらの図面を見せてもらうわ。ありがとう」
「とんでもないことでございます。またご用がありましたら、いつなりと承ります。それから、この者ですが、本日より、王女殿下付き秘書官として、加えていただきたく存じます」
控えていた、見知らぬ男が進み出て、カベンリー・ロークロイトですと名乗った。
「ええ、そうさせて。机はどうしたらいいかしら」
「明日の朝までに運び込みます。今日のところは、ご指示のあったものを、国王秘書室でまとめさせます」
「分かったわ」
「では、私は失礼いたします」
そう言って、ジェファーが部屋を出ると、ミスリーが席を立って、グレイフェイシアの執務机まで来た。
「基礎修練の手順書は、まとめました。現在は、異能開発事業についてまとめているところです。カベンリーには、そのなかの、通信局の運用について、まとめさせてはいかがでしょうか」
ミスリーの言葉に、グレイフェイシアは頷いた。
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