ミルフロト王国

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「そうね。その前に、少し整理したいわ。そちらの椅子に座りましょう、4人で」 そう言って、グレイフェイシアが、応接用の椅子を示すなか、ボーリンが驚きの声を上げた。 「私もですか?」 「ええ、そうよ。ずっと(そば)にいるのですもの。ときには話し相手になって欲しいわ」 「話し相手…ですか」 「ええ。それには、私が何をしているのか、知ってもらわなければね。さあ、図面を移動させましょう」 ミスリーとカベンリーが、手分けして図面を持ち、4人は、応接用の長椅子に座って、向かい合った。 「まず、私が立ち上げようとしているのは、異能開発事業と言うの。これは、異能の制御と使用法の確立を行うことで、新たな異能の活かし方を開発するというものよ。異能の制御とは基礎修練、使用法とは応用修練、新たな異能の活かし方とは、仕事、または生活に役立てる何かよ」 グレイフェイシアの言葉に、ボーリンとカベンリーが、大きく頷いた。 ミスリーが、あとを継ぐ。 「現在の状況を説明します。今、朝のうちだけですが、基礎修練を選別師16人に指導しています。場所は、土の者を(くろがね)の間、風の者を(なえ)の間、水の者を花の間、火の者を(あかね)の間に振り分けています」 ミスリーは息を継いだ。 「このあとは、修練指導師を8人、そして秘書官、親衛騎士と教えていき、それ以降に修練する者は、秘書官が選定します」 ボーリンは、熱心に耳を傾け、カベンリーは、手帳に書き留めていく。 「国王陛下によりご指示があったのは、ここまでです。これからの動きですが…シャリーナの図面を出しましょうか」 ミスリーとカベンリーが図面を確認して、シャリーナの壁のなかの、土地利用計画図を広げた。 「まず、基礎修練場は、シャリーナ城の外に設けます。こちらでしょうか」 グレイフェイシアは、急いで言った。 「ああ、いいえ。王城の東ではなく、北に設置する予定よ」 「では…この辺りですか?」 「そう思うわ」 「土、風、水、火は分けるのでしょうか?」 「そうよ。図面を見せて…これ」 新たな図面を開いて確認すると、すぐに閉じて、再びシャリーナの土地利用計画図を見る。 「シャリーナの街は、このように変えられるのですね。複数の水汲み場から水路を延ばして、壁のなかで張り巡らせる。飲み水は、水汲み場から直接得て、それ以外は、水路の水を用いる。では、次は、応用修練場について、見てみましょう」
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