ミルフロト王国

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ミスリーの言葉に従って、次はリンデンベール城近辺の土地利用計画図を開いた。 「応用修練場は、こちらの規模ですね。管理小屋の主な用途も書き込んであります。管理室、休憩室、狩った鳥獣の処理室、調理室、食事室」 「狩った鳥獣の処理室…?」 グレイフェイシアが首を傾けると、ミスリーが言った。 「応用修練の手順書も作成しなければなりませんね。ボルゴ様に確認します」 「そうして。応用修練場ができるのは、数年先になりそうなの。それまでは、基礎修練場のなかで、できる規模のものよ」 「かしこまりました。次に通信局ですね。シャリーナの土地利用計画図を…ありがとう。このように、基礎修練と応用修練を行ったら、次は異能を役立てます。土は、これから土地を造り変えるので、その仕事を、風は、風を利用した伝達を、風を持たない者にも使えるようにする仕事を、水は、この水路の整備などの仕事を、火は、とても限られた人数になりますが、陶器を焼く仕事をと考えています」 「火は、日常で、なんとか使えないかしら。ランプにも、(かまど)にも、湯を張るのにも使うのだもの、細々(こまごま)としたことだけれど、なければ困るわ」 グレイフェイシアが言うと、ボーリンがためらいがちに口を開いた。 「火の者は、自信を持って扱える者を探すことが大変なのです。修練で制御が緻密になるのなら、応用修練を修めた者という証を持たせて、火を扱う者として、看板を掲げさせるというのはいかがでしょう。本人も、雇う者も、安心できます」 「火を民に配るのではなくて、火を扱う者を雇わせるのね。それは、考える余地がありそうだわ」 グレイフェイシアが言い、ミスリーが頷いた。 「そのように考えてみましょう。水汲み場のように、一定の距離を空けて、仕事を請け負わせれば、(かね)は払うことになりますが、探し回る必要はなくなります」 「お金を払うの…国でなんとかできない?」 「国で火の者を雇ったとしても、税という形で、民から(かね)を取らなければなりません」 「ぜいってなに?」 「国を国として動かすために、必要な(かね)を、民から回収することです」 グレイフェイシアは、しばらく黙って、考え、ようやく気付いた。 「私たちの生活しているお金は…民からもらっているということなの?」
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