ミルフロト王国

71/79
前へ
/760ページ
次へ
「王家には、長年蓄えてきた王家の財産があります。王家の方々の生活は、そちらで賄われているのではないでしょうか。私の給金は、税から出ています。国のために働いていると認められているので」 「それは…つまり、あなたたちを使うということは、民のお金を使うということなのね…」 「ただ使うのではありません。民のために使うのです。王女様がしておられることは、民のための取り組みです。そういうことに、税は使われるべきなのです」 グレイフェイシアは、心許ない気持ちで、首を傾けた。 「私…不当に民からお金を奪ってはいない?」 「奪ってなどいません。どうぞ、誤解なさいませんように」 ミスリーの言葉に、ひとまず落ち着いて、グレイフェイシアは、話を元に戻した。 「ええと…それで、火の者は、火を扱う商売をさせるということで…ここまでかしら?」 「はい、そのように存じます。あとは、仕事の種類を増やして、民が選べるように、充実させなければなりません」 「そうね。それでは私はこれから…何をしたらいいかしら」 「また街にお()でになり、人々の生活をご覧になり、異能の活かし方をお探しになることでしょうか。ボーリンさんは、王女様のお供を、私は異能開発事業のまとめを、カベンリーは、通信局の内容を固めて、事業として立ち上げる手順をまとめる、ということではいかがでしょう」 「そうね。そうしましょうか。カベンリー、中継地点を書き込んだ地図があるの」 グレイフェイシアはそう言って、ミルフロト王国の平面地図を出し、最初はシャリーナの北に位置する、区長を置いている町、ガローナへの通信経路を作ってみて欲しいと話した。 「それから、シャリーナ内で伝達を行き渡らせたいの。それに近い形で、クラール国内で伝達を行き渡らせる計画を立てて。クラール国との交渉は、お父様にお任せするから、そこまでは、整えておかなければならないわ」 「かしこまりました」 「私は明日(あす)、ミーチェとシーラの家に行くことにするわ。それから…職人の作業場の通りに行ってみましょう。あとは…ほかに何か、できることがないかしら」 カベンリーが言った。 「王女殿下には、修練をシャリーナ内に(とど)めておくおつもりですか?」 その問いを受けて、グレイフェイシアは考え込んだ。 レザリエは、伝える者は選ばなければならないと言っていたが、同時に、民には必要なのだとも言っていた。
/760ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加