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「王家には、長年蓄えてきた王家の財産があります。王家の方々の生活は、そちらで賄われているのではないでしょうか。私の給金は、税から出ています。国のために働いていると認められているので」
「それは…つまり、あなたたちを使うということは、民のお金を使うということなのね…」
「ただ使うのではありません。民のために使うのです。王女様がしておられることは、民のための取り組みです。そういうことに、税は使われるべきなのです」
グレイフェイシアは、心許ない気持ちで、首を傾けた。
「私…不当に民からお金を奪ってはいない?」
「奪ってなどいません。どうぞ、誤解なさいませんように」
ミスリーの言葉に、ひとまず落ち着いて、グレイフェイシアは、話を元に戻した。
「ええと…それで、火の者は、火を扱う商売をさせるということで…ここまでかしら?」
「はい、そのように存じます。あとは、仕事の種類を増やして、民が選べるように、充実させなければなりません」
「そうね。それでは私はこれから…何をしたらいいかしら」
「また街にお出でになり、人々の生活をご覧になり、異能の活かし方をお探しになることでしょうか。ボーリンさんは、王女様のお供を、私は異能開発事業のまとめを、カベンリーは、通信局の内容を固めて、事業として立ち上げる手順をまとめる、ということではいかがでしょう」
「そうね。そうしましょうか。カベンリー、中継地点を書き込んだ地図があるの」
グレイフェイシアはそう言って、ミルフロト王国の平面地図を出し、最初はシャリーナの北に位置する、区長を置いている町、ガローナへの通信経路を作ってみて欲しいと話した。
「それから、シャリーナ内で伝達を行き渡らせたいの。それに近い形で、クラール国内で伝達を行き渡らせる計画を立てて。クラール国との交渉は、お父様にお任せするから、そこまでは、整えておかなければならないわ」
「かしこまりました」
「私は明日、ミーチェとシーラの家に行くことにするわ。それから…職人の作業場の通りに行ってみましょう。あとは…ほかに何か、できることがないかしら」
カベンリーが言った。
「王女殿下には、修練をシャリーナ内に止めておくおつもりですか?」
その問いを受けて、グレイフェイシアは考え込んだ。
レザリエは、伝える者は選ばなければならないと言っていたが、同時に、民には必要なのだとも言っていた。
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