ミルフロト王国

72/79
前へ
/760ページ
次へ
「…私は…ミルフロトの民に広めたいの。でも、お父様はまだ、結論を出されていないのだと思うわ。お父様のお許しがなければ、動けないわ」 「承知しました。それでしたら、王女殿下には、ミルフロト国内の知識が必要と存じます。地形のこと、各区内の統治について、各区の周辺状況、国王陛下とご領主(がた)との関係などですが、すでにご存じのことでしょうか?」 「いいえ…知らないわ」 カベンリーは頷いた。 「地形については、地図をご覧になるとして、そのほかのことは、確認してまいります。しばらくお待ちいただけますか?」 「ええ」 「あともうひとつ、私も修練をしたいのですが、よろしいでしょうか」 「ええ、構わないわ。明日(あす)の朝、あなたの属性の部屋に、来るといいわ」 「ありがたく存じます。では、失礼いたします」 カベンリーは、そう言って部屋を出て、ミスリーは、図面をまとめて机に戻る。 グレイフェイシアは、何をするか迷って、ボルゴにもらった、シャリーナ内の詳細地図を見ることにした。 応接用の机に広げて、ボーリンと、この辺りに行った、行かなかったと話す。 そうしていると、カベンリーが、ジェファーを連れて戻ってきた。 ジェファーは(うやうや)しく腰を曲げて、言った。 「国王陛下より、王女殿下に、ミルフロト国の内情を説明するようにと(おお)()かりました。これより、お時間はございますか」 「ええ、あるわ。お願いね」 「では、執務机の方にしましょう。こちらの地図をご覧ください」 グレイフェイシアが執務机に向かって座り、ジェファーが地図を広げるなか、カベンリーは一礼して、退室した。 「さて、ミルフロト国の統治ですが、簡単に申しますと、国王陛下の(もと)に、国政を分担する大臣たちがおりまして、ミルフロト国を領地ごとに分けた区に区長を置き、中央と地方を結んで、行っております」 「領地」 「はい。まず、ミルフロト国は、近隣の領主から尊崇を集めておられました、初代ミルフロト国王陛下に領地を預ける形で始まりました。ミルフロト国は、複数の領主が治める土地の集まりなのです」 「んん、続けて」 「はい。そのご領主方と国王陛下を結ぶ役目を負っているのが、区長たちでして、区長が各地で、土地の管理を行っております」 「ええ」
/760ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加