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「現在、ご領主方と国王陛下の関係は良好ですので、特に問題はありません。ですがこれだけは、強く心に、お留め置きください。各領地は、ご領主方のもの。勝手な振る舞いは、許されません」
グレイフェイシアは、体を強張らせた。
それぐらい、ジェファーの言葉は強かった。
「それは…例えば、領主たちの土地に、勝手に建物を造ってはいけないということ…?」
「然様でございます。ミルフロト国は他国と違い、領土のすべてが、国王陛下のものでは、ないのです。国王陛下の領地は、シャリーナと、ご領主が絶えた領地のみとなっております」
「領主が絶えた…リタは、それでは、お父様の持ち物なの?」
「はい。リタは特別な土地です。そのほかは、それぞれのご領主の領地となっております」
「そうなの…」
「クラール国がミルフロト国の中心にあるのは、こちらが、もとはクラール領主の領地だったからなのです。周辺の領地が、初代のミルフロト国王陛下に領地を差し出すなか、クラール領主だけが、領地を手放さなかったのです」
「それは…仲が悪かったの?」
「いいえ。シャリーナ領主であられました初代ミルフロト国王陛下とも、歴代の国王陛下とも、ご友人として、長く付き合いのあるご領主でした。そのようななか、あるとき、クラール領主は、クラール王国を建て、一代のうちに、共和国へと移行させてしまいました」
「そうだったの…では、ミルフロトの土地には、多数の王国が林立していてもおかしくなかったということかしら…」
「国として建てるには、小さすぎる領土ではありますが、そのような考え方もできます」
「つまり…各領主とは、対等なのね…」
「もちろん、代を替わる度に、国王陛下に忠義を示しに、お出でになります。ですがそれは、国王陛下が彼らに対して、忠義を尽くしておられるからなのです。国王陛下は、ご自身を、そのような立場に置いておられるのです」
「私…私も、その立場を理解して、そのように振る舞わなければ、ならないのね…」
「今後、ご領主方と顔を合わせることに、なるかもしれません。品位を保ちつつ、相手への配慮が必要になるでしょう」
グレイフェイシアは、厳しい表情をしたが、頷いた。
「難しそうだけれど、やってみせなければね…」
ジェファーは、少し頭を下げて、続けた。
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