ミルフロト王国

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「国王陛下は、ご領主(がた)とは、そのようなお立場で接しておられます。ですがご領主には、様々な方がおられるので、親密な方、少々、心に距離のある方と、関わり方も様々です。王女殿下には、修練を、どちらの領地でも同じようにと、お考えかと存じますが、命令を下して、一度に従わせる、というわけには、いかないのです」 グレイフェイシアは、深く頷いた。 「理解した…と思うわ。ミルフロト国全土に、修練を広めようと思うなら、領主それぞれと話して、1人1人から、取り組みへの賛同をもらわなければならない…のよね?」 「然様(さよう)でございます。また、領地ごとに、民の生活にも、差や違いがありますので、同じ仕組みを同じように導入する、というわけにも、いかないのです」 「まあ、そうなの。それでは、私、各領地に足を運んで、それぞれに合った仕組みを造らなければならないのね…」 「その辺りは、どうぞ、下の者にお任せいただきますよう、お願い申し上げます。王女殿下が動かれるには、どうあっても、人や、費用を掛ける必要が、出てくるのです。気軽にお出掛けになれるのは、シャリーナ内だけと、ご理解いただきたく存じます」 「人や、お金…、それはつまり、ぜい、を使うということ?」 「ほかの領地をご視察になる、ということでしたら、それは(おおやけ)のお仕事となりますから、税が使われます。ですが、問題は、使われるのが税であるということでは、ありません。その金額なのです」 ジェファーは、息を継いで続けた。 「領地すべてに足を運ばれるということは、それだけ費用が大きくなるということです。王女殿下が動かれるのですから、一度のご訪問でも、その金額は、大きなものになります」 「あ…、そうよね…、私、浅はかだったわ」 「いいえ、王女殿下は、よく考えていらっしゃいます。ただ、ご存じでないことが、多いだけです。知識は、これから、身に付けられます」 「そう…そうね。そうだわ。私自身の財産とされるお金を、使うのではいけないかしら」 「王女殿下の財産は、王家の財産の一部と見做(みな)されます。税を使うことを避けるため、名目を、ご視察ではなく、ご遊覧としますと、王家の財産を使ったと見做(みな)されます。今後長く、ミルフロト国を支えなければならない、王家の財産を、(いたずら)に散ずることは、王女殿下の品性を貶めることになります。それでは、ご領主(がた)の信用を得ることは、難しくなることでしょう」
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