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「王家の財産の一部…確かにそうね。王家とは…国を支えるためにあるべきなのね。私、そんな意識すらなかったわ」
「ご領主方には、そのように期待して、現在も、国王陛下を戴いておられるものと存じます。それだけに、王家の動向には、注目しておられることでしょう。王女殿下が、シャリーナをお出になることは、周囲の目を引く、大きな動きです。ご領主方の耳にも、届くでしょう。その動きが、どのように受け取られるか、王女殿下には、ご配慮いただければと存じます」
「そう…。ええ、分かったわ。行動には充分、気を付けなければならないのね。そうすると、私、領主たちと、直接話をすることもできないのかしら」
「その辺りは、国王陛下のお考えもありますので、どうぞ、独断では動かれませんように。さて、ここまでにして、お茶を召し上がりませんか」
そう言われて、グレイフェイシアは、緊張の糸が切れた気がした。
「あっ、そうね。休みたいわ」
「急いで用意いたします」
ボーリンがそう言って、部屋を出て、グレイフェイシアは、ミスリーにも声を掛け、応接用の長椅子に座った。
すぐに茶は並べられ、少しばかり、同席する、しないの、遣り取りがあったあと、ボーリンも椅子に座った。
それを見て、ジェファーが言った。
「侍女ではなく、相談役としてお側に置けるよう、国王陛下に進言しましょうか。侍女と呼ぶよりは、同席できる場が増えるでしょう」
グレイフェイシアは、両手を合わせて喜んだ。
「そうしてもらえる!?」
「はい。何かよい名称がないか、探しましょう。ボーリン、明日は王命により、地位が与えられるかもしれない。侍女服ではなく、国王陛下の前に出られる服装で、控えていなさい」
「それは…、はい、そのように致します」
硬い表情で頭を下げるボーリンに、ジェファーは言った。
「ボーリン。これまで、王女殿下が表に出られた例はない。あなたの立場も、前例のないものとなるだろう。そこまで見込まれて、選ばれたのだと、覚えておきなさい」
ボーリンは、目を大きくして、ジェファーを見ると、視線を伏せて頷いた。
「心します」
グレイフェイシアは、ただボーリンが、公な場に、共に出てくれることが嬉しかったが、その表情を見て、負担なのではないかと、不意に不安になった。
「ボーリン、平気?」
そう言うと、ボーリンは、目を大きくして、それから首を横に振り、ぎこちなく笑った。
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