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―Ⅸ―
翌朝、家族の食堂に呼ばれて、食事を摂ると、修練前に、国王執務室に来るようにと、レザリエが言った。
「ボーリンを連れてきなさい」
「はい、お父様」
答えて、急いで居室に戻り、身支度を済ませると、ボーリンと顔を合わせた。
ボーリンは、すっきりとした、黒地の多い服を着て、グレイフェイシアに頭を下げた。
「おはようございます」
「おはよう。では、早速、行きましょう」
気が急いて、やや急ぎ足で、国王執務室に入ると、レザリエのほかに、ラルと、シュガンとレスラー、それに、見知らぬ騎士がいた。
レザリエは、少し待てと言って筆を走らせ、すぐに置くと、立ち上がって、執務机の前に出た。
「さて、ボーリン。前に来なさい。本来なら、儀式の間で行うところだが、今回の任命は、暫定のものだ。いずれ正式に、広く認められるような役を与える。それまで、この役を務めよ」
「はい、国王陛下。精一杯尽力させていただきます」
腰を曲げ、顔を伏せるボーリンに頷き、レザリエは、机の上に置かれた紙を渡した。
「本日より、ボーリン・マクマーレンを王女グレイフェイシア・メイ・クロリアの尚侍の役に付ける。侍女長より数段、位が高いものと心得よ。王女の友人としてもよかったが、まだ付き合いが浅いこともあるので、これからの関係を、見守ることとした」
ボーリンは、渡された紙を見て、深く頭を下げた。
「ボーリン・マクマーレン、グレイフェイシア様付き尚侍の役、謹んでお受けいたします」
「うむ。お前の働きに期待している。行きなさい」
「失礼いたします」
ボーリンは、グレイフェイシアの後ろに控えた。
「ありがとうございます、お父様」
「礼を言うのは、早かろう。ボーリンの立場を確立するには、グレイフェイシア、お前自身の立場を、確立せねばなるまい」
グレイフェイシアは、こぶしを胸の上に置いた。
「はい…、はい、お父様」
それから、グレイフェイシアとボーリンは、挨拶して部屋を出て、修練室に向かった。
いつものように結界を張り、指導する。
昼まで続けて、昼食を摂り、休むと、ミーチェとシーラを連れて、城を出た。
まずはシーラの実家に行き、ひとつの建物のなかに、複数の家族が住む、背の高い建物に入った。
シーラには、幼い弟や妹が多く、その子らは、よく母を手伝っていた。
その様子を見て、グレイフェイシアたちは、シャリーナの壁の外に出て、今度は、ミーチェの実家へと向かった。
壁の外にあって遠いので、ミーチェ自身は、王城に部屋をもらっている。
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