王の執務室

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「…なんとか、手助けできませんか」 その言葉に、ロージョーンは、笑みを浮かべて、ジョージイを見た。 「我々ほど無力な王家は、世界にない」 「承知しています」 ロージョーンは、笑みをそのままに、視線を伏せた。 そして言った。 「ジョージイよ。我が王家は、主権を委譲したことによってではなく、無血により主権を獲得した民衆の、穏健にして争いを回避した努力を誇りとし、忘れぬための証として、ここに在る。我々は、ボルファルカルトル国の心なのだ」 「はい」 「それを体現せねばならない。よいな。行ってよい」 「はい」 ジョージイは、深く頭を下げて、部屋を出た。 ロージョーンは、椅子を回して、背後にある、窓の外の庭を眺めた。 2年前に会った、アークのことを思い出す。 きらきらした瞳の、まっすぐな心根の少女。 また会いたいなと、ふと思った。 世界は動き始めている。 それも大きく。 ボルファルカルトル国は、生き残れるだろうか。 きちんと、独立した国として。 先のことは判らないが、()の国とは、助け合うことで、共存していかなければ、ならないのだろう。 その相手は、どことなるのだろうか。 冷静に、見極めて、動かなければならない。 ボルファルカルトル国のために。
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