493人が本棚に入れています
本棚に追加
──その衝撃的な出来事は新しい命と共に突然訪れた
『おぎゃぁおぎゃぁ!!』
「産まれた!」
身重だったチュリンがめでたく出産の日を迎えた。
チュリンが実家同然の娼館で産みたいと望んでいたのでその願いを叶えたのだが……
「ディガ様、おめでとうございます。可愛らしい女の子でございますよ」
「女の子……」
胸いっぱいに温かなものがじんわりと込み上がり思わず泣きそうになった。
「チュリンは無事か?」
「はい、母子共に元気ですよ」
「会うことは出来るか?」
「……」
「? 何故黙る」
「えぇっとですね……今はちょっと……」
「なんだ、どうして会えない?! やはり何か問題が──」
「いえ! 決してそのようなことは……ただ、今は」
「もどかしいな。チュリン、入るぞ!」
「あっ! ディガ様」
言葉を濁し制止するハウラに構わずチュリンと娘に会いたいがために産室になっている部屋へと入った。
「あ……ディガ様」
「───へ」
ベッドに横たわる愛妻の顔を見た瞬間、僕は今までに発したことのない妙な声を出してしまった。
「どうぞ見てやってください。ディガ様にそっくりなとっても可愛らしい女の子です」
「………誰だ」
「え」
「あ、あなたは……どなたですか?」
「ディガ様? 何を」
「僕の妻は……チュリンは何処に──」
「あぁーディガ様! ちょっと此方にいらしてください! チュリン、あなたはまだゆっくり寝ていなさいね」
「は、はい……」
驚愕する僕は慌てて部屋に入って来たハウラに首根っこを掴まれズルズルと部屋から出されてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!