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「月夜」
「何?」
「今夜のディナーは俺の家に変更」
「え」
「月夜と過ごすクリスマスは今年だけじゃないからな。とりあえず今年はホテル、キャンセルしておく」
「……」
「だけど月夜とは一緒に過ごしたい」
「……」
「速攻用事片づけるから俺の家でイブのディナーしよう」
「……真理」
「どんなに遅くなっても必ず帰って来るから。料理とかお願いしてもいい?」
「も、勿論! 私、張り切るよ」
「ん、よかった。じゃあこれ、鍵」
「…!」
掌に乗せられた真理の部屋の鍵。ひんやりと冷たかったけれど、すぐに掌の温度で温かくなった。
「じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい!」
真理が人波にのまれてその姿が見えなくなるまで見送った。
(よし! じゃあ買い物をしようっと)
頭の中で今夜のメニューを考えながら足取り軽やかに街中を駆けて行った。
時計の針は21時を過ぎていた。
(やっぱり遅いなぁ)
大学での用事がなんなのか高校生の私に分かる訳がないけれど、卒業間近の真理には色々こなさなくてはならない事が沢山あるのだろう。
ぼんやり観ているテレビ画面にはクリスマスらしいバラエティー番組が延々と映っていた。
(真理……早く帰って来て……)
そんなことを思いながら炬燵の中で徐々に意識を手放していった。
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