月夜の魔法使い(番外編2)

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「あーいや、今更だけどティスパルが月夜の傍に16年もいたっていうのがやけに嫌な感じで」 「……」 「解っているんだ、月夜の力の暴走を吸収するためにティスパルの存在は必要不可欠だということは」 「そういう意味だったら真理だってずっと私の傍にいてくれたじゃない」 「いや、俺はごく短い間だけだったし一緒には暮らしていなかったし、それに」 「それに?」 「……あー……いや、なんでも」 「……」 真理のいいたいことは何となく解った。 つまり猫だったティスパルはたまに起こる私の力の暴走を吸い取るために口同士で接触をしていた──いわゆるキスしていたというのがネックになっているというところだろう。 (でもあれって中身はティスパルだって知らなかったし、まんま猫だったし) そりゃリウスが人間で、若い男だったと知った時はめちゃくちゃ驚いてショックだったけれど、でも今となってはそうするべきだったという事情も解ったし、ティスパル本人のこともよき友人のひとりとしての気持ちがあるから私にとっては過ぎ去りし日のいい想い出──ということになっているのだけれど…… (今の真理にとってはあまり面白くない状況だったんだろうなぁ) 傀儡から人間になった真理はそれまでの希薄な感情の持ち主からいい意味でも悪い意味でも感情豊かになっていた。
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