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此処はアトラティス国。アトラティス国王リュース様の統治する豊かな国。
その偉大なるリュース様と三次元の人間である月子様との間にお産まれになった姫君である月夜様がシンディリーア──いや、時定真理と結婚してからもう如何程か。
(姫様、私は相変わらず魔法使いの弟子をやっております)
『お言葉に甘えてもう寝るね、おやすみ……ティスパル』
「……」
月子様がつけたリウスという名前ではなく、初めて私の本当の名前を呼んでくださった時の喜び、未だ忘れることが出来ません。
恋──していたのだ、私は。
恐れ多くも姫君であらせられる月夜様に……私は──。
「……はぁ」
本日何度目になるか分からないため息をつく。
いい加減身を固めろとしつこくいって来る師匠のディガが勧める見合いはどうにも上手く行かなかった。
ディガが勧めるだけあってみな其々に美しく教養のある女性ばかりだというのに。
(どの方もどうあっても心が揺さぶられないのだ)
魔法薬の調合に使う薬草を探しに森の奥に分け入って行く。
薄暗く鬱蒼とした森の中は考え事をするのに都合がよかった。
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