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「あぁ……私としたことが~~~」
気がついた時には辺りはすっかり暗くなっていた。
無我夢中で抱き続けた姫様はとっくに意識を失い、可愛らしい顔で寝息を立てていた。
「……」
そのあどけない顔を見ているとどうしてもまた抱きたくなってしまう。
(いやいや自制、自制! 自制しろぉぉぉ!!)
一生懸命によからぬ雑念を払うように精神統一する。
(……しかしこれは一体どうしたことか)
何故姫様が突然現れたのか。何故私とこんな──……
「……はぁ」
訳の分からない状況に戸惑いながらもどうしたものかと困惑するのだった。
羽根のように軽い裸体をマントの下におぶって、居住地であるアトラティス城まで帰って来た。
幸い人気のない裏の通行ドアを知っていたために其処から城内に入った。
(誰にも見つからないようにサッサと自室に向かおう)
大魔法使いディガの一番弟子である私にはそれなりに大きな部屋が割り当てられていた。
勿論城を出て一軒家を構えることも自由なのだが、ディガの不規則な雑務の頼まれ事に付き合っていると城に住みつく方がなにかと便利だった。
コツンコツンと自身の靴音だけが響く静かな廊下を歩き、あともう数メートルで部屋だと思った瞬──
「おいティスパル、この半日何処に行っていた」
「?!」
いきなり背後から声をかけられ心臓が飛び出る程に驚いた。恐る恐る振り向くと其処には今一番会いたくなかった師匠の不機嫌そうな姿があった。
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