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店先に立って客引きをしているガタイのいい男や、廉っぽい女たちがひしめき合っているいわゆる歓楽街と呼ばれる場所だ。
都会にはこういう場所が多いのだと聞いてはいたが特に行きたいとも思わなかった。
図らずとも今回初めて足を運ぶことになってしまったが。
「おいジャンダ、僕は──」
「到着ぅ~」
「!」
ある一軒の店の前で立ち止まったジャンダはやっと僕の方を向いて少しいやらしい笑みを見せた。
「なぁディガ、運試しをしてみないか?」
「運試し?」
藪から棒に何をいうかと思ったら実に子どもっぽい誘い文句だった。
勿論どんな理由であれ元からジャンダの誘いを受けるつもりはなかったのできっぱり断ろうと口を開けかけたが、間髪入れずにジャンダは続けた。
「あのなぁ、此処には不思議な女がいるんだ」
「……不思議な女?」
「その女は生まれた時にある預言者に『この子が産む子どもは将来アトラティス王になる』という予言を受けたんだと」
「!」
突拍子もないことを言い始めたとは思ったが、意外にも僕の琴線に少し触れる内容だったために黙って続きを訊くことにした。
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