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築10年の二階建てアパート。8畳一間に決して広くないキッチンとバストイレ。これが私のお城。ひとりで住むには充分なお城だった。
「ニャァ」
「ん、お腹空いているの?」
相変わらずゴロゴロ喉を鳴らしながら私に擦り寄ってくる猫。
(本当に人懐っこいなぁ)
多分まだ若い猫。正確な年齢は分からなかったけれど仔猫ではないことは確かだ。
「あっ、ついてる。雄だ」
私は実家に住んでいる時、雌猫しか飼ったことがなかったので雄猫のアノ部分を見たのは初めてだった。
なんとなく物珍しさからジッと見ていると猫はジタバタ動き出して私の手から逃れていってしまった。
「ごめんね、恥ずかしかったか」
部屋の隅っこに丸まった猫に向かって一応謝ってみた。
「……」
なんだか攻められているような猫の目線に思わずたじろぐ。それは猫にも羞恥心というものがあるのか? と思ってしまうような視線だった。
「さてと……ご飯ご飯」
気を取り直して猫にあげるご飯を探すために冷蔵庫を開ける。とはいえ生憎そんな食材を都合よく買い込んではいなかった。
「んー……どうしよう」
考え込んでいると猫が私の夕食用に買って来たコンビニのお弁当を袋から出そうとしていた。
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