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「わぁ、ダメダメ!」
そんなにお腹が空いているのかと思い、仕方がなくもう一度コンビニに行くことにした。
「じゃあ君のご飯を買って来るからおとなしくお留守番していてね」
「ニャッ」
「……通じている?」
タイミングよく鳴き声をあげてくれたのでなんとなく会話した気になってしまった。
(そんなことあるわけないけどね)
気を取り直して猫を置いて部屋を出た。
コンビニで猫用の缶詰を買いアパートに戻る道すがらほんのり暗くなって来た夜空の一部がやけに明るいことに気がついた。
(あぁ、今日は満月か)
真ん丸い大きな月は淡い光を放っていた。
もう少し時間が経って完全に空が暗くなればさぞかし眩い光を照らし出すのだろう。
自分の名前が【月子】だからなのか昔から月が好きだった。一度見始めれば時間を忘れて見惚れてしまう。
(……満月の夜は何かが起こる)
何故か小さな時からいつもそう思っていた。
だけど現実にはそんな何かが起きることもなく、何気なく通り過ぎて行く夜ばかりだった。
アパートに着き部屋のドアを開ける。キッチンにコンビニの袋を置き、部屋の中にいるだろう猫に声を掛ける。
「ただいま。ご飯買って来──」
猫に掛けた言葉を最後まで言い切ることが出来なかった。
何故なら私の目に飛び込んで来たのは猫の姿ではない、ありえないものの姿を見つけてしまったから。
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