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私はその光景に呆然としてしまった。だって私の部屋の中には拾って来た猫ではなく、大きな男がいたのだから──。
「……」
「……」
私も男もジッと見つめ合ったまま言葉を発しない。
この時、人間はあまりにも驚くと悲鳴とか叫び声というのは出ないのだと学んだ。
「……あの」
「!」
男が私に向かって話し掛けて来た。私は思わず玄関ドアまで後退った。
「あっ! 俺、猫!!」
「はぁ?!」
男が発した言葉に思わず応えてしまった。
(ちょ……今、何ていった?!)
戸惑いながらも男を凝視した。そんな私に構わず男はいきなり怒涛のように話し出した。
「お、俺は君に拾われた猫なんだ! 猫になって半年だけどその間、誰にも拾われなかった! 助けてもらえなかった! 何度も死にそうな目に遭ったけど俺の運は尽きてなかった! 満月の夜に君に逢えたことが何よりも俺の運の強さ! ラッキーだ! 本当に俺を拾ってくれてありがとう!!」
「……………」
「……えっと……訊いてる?」
あまりにも饒舌に捲くし立てるので後半は何をいっていたのか覚えていない。
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