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ただ『俺は君に拾われた猫なんだ』というところだけ頭の中に入った。
──入った……の、だけれど……
「……け、警察」
小さくそう呟いて慌ててコンビニの袋と共にテーブルに置いた携帯電話を掴んで外に出ようとした。
「待って!」
男は物凄い速さで私の元まで来て携帯電話を取り上げてしまった。
「きゃっ!」
そのあまりにも流れるような動作に目を回してしまって足元がぐらついた。
「危ない!」
咄嗟に私を抱きとめてくれたのは男だった。
「……あ……あ……」
「そんなに怯えないで…。俺、悪者じゃない」
「……」
凝視した男の瞳を何処かで見た覚えがあった。
なんとなくあの黒い猫と同じ瞳だと──……
(深緑の瞳……)
私はしばらくその瞳に囚われてしまい身動きが出来ずにいたのだった。
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