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「……あの」
「──分かりました。じゃあ仮に……ではありますが、あなたは私が拾った猫、という体で話を進めて行きましょう」
「! 訊いてくれるの、俺の話」
「訊いて欲しいんでしょう?」
「うん、うん! 訊いて欲しい!!」
「私は今は、夢の中にいるものと思います。だから何が起きても、何を語られても、現実のことじゃないと思うようにします」
「……まぁ、君がそうしたいというのなら俺はそれで構わない。兎に角俺の話を訊いて助けてくれればそれでいいから」
「助ける?」
「うん。今から話すこと──というか、話を訊いたら君には俺を助けてもらいたいんだ」
「えっ! 訊いたらどうしても助けなくっちゃいけないの?!」
「うん」
「それは……嫌だなぁ」
どんな話で、どんな事をさせられるのか分からない状況で、素直に『はい』とは言い難い。
「でももう君に拒否権はない」
気が付かないうちに男は私の傍まで来ていて顔を間近に寄せていた。
「ちょっ!」
「俺はもう君に決めたから拒否は出来ない」
「?!」
正体不明の者の恐ろしさが体中を駆け巡った。
どうやらいつの間にか逃げも隠れも出来ない状況に陥ってしまっていたようだった。
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