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「おまえと出会った時にはわたしは既に100を過ぎていた。魔法使いというのは元々長生きの属性ではあるが、それは魔法力を体に貯め込むことによって体の細胞を活性化しているための若作りなのだ」
「……」
「わたしはわたしの魔法力を体を重ねるという行為で少しずつおまえに注ぎ込んで来た。そのためにおまえの体には魔法使いとしての魔法力が貯まっている。出会ってから既に50年は過ぎている。なのにおまえは出会った頃と遜色ない、若いままの姿形をしている。それはひとえに魔法力の作用なのだ」
「じゃあ僕はアーリィの魔法力を消費させて生き長らえさせてもらっているということ? そのために……代わりにアーリィが──」
「それで……いいのだ」
「え」
しわくちゃの手が僕を引き寄せ吐き出すように告げた。
「ディガ、おまえには類稀な魔法使いとしての能力が潜在している。その能力を開花させていずれこのアトラティスを支える魔法使いになれる存在だと、わたしは思っている」
「!」
「それが解ったからこそわたしはおまえにわたしの全てを与えた。わたしの持てる魔法力全てを…。これからはより一層の高みを目指して魔法使い養成所に行って学ぶがいい」
「……アーリィ」
「且つてはわたしも夢見た。いつか大魔法使いになってアトラティスのために働くことを……」
「……」
「わたし自身では叶わなかったが意思を託せる後進を育てることが出来て……わたしはそれだけでもう……」
「っ」
アーリィが薄っすら泣いたのを見て僕はアーリィ以上に泣けてしまった。
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