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「だけどその女の貧しかった両親はそんな預言者のいうことを信じずに目先の大金欲しさにこの娼館に売っちまったんだ」
「……」
「ところがこの娼館の主人がめっぽう信心深い奴でなぁ、その女がいずれ産む子どもがアトラティス王になると信じて疑わなかった訳」
「……」
「それで件の預言者に更に詳しい話を訊くと『アトラティス王を産むためには父親は魔法使いじゃないとダメだ』という予言を受けたんだと」
「魔法使い?」
「そう、魔法使い! ──ってことで此処の主人はその女を宝物の様ように扱いながらも魔法使い専用の娼婦にしているんだ」
「矛盾していないか? それ」
「そうか? 主人がこの魔法使いなら試させてやってもいいって身元確かな優秀な魔法使いの男を吟味しているんだぜ? この世界においては寧ろVIP待遇だろう」
「……」
「という訳で解ったか? 此処には特別な女がいる」
「それは解ったがだからどうして此処に連れて来られて運試しとかって──……あ」
「ふふ~ん、察しのいい天才魔法使いのディガには解ったかな?」
「……まさか」
先刻から若干感じていた居心地の悪さ、そして例えようのない不快感。
全ては思い過ごしではなかったようだった。
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