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01-料理対決
一塊の肉を前に、寺田はううんと唸り、腕組みした。
初めて扱う食材である。無理もない。どんなパティシエでも、肉をお菓子にしようなどと考えた者はいないだろう。さすがは銘食会、対決のテーマに難しいものを持ってくる。電話で「ダチョウの身」と聞かされたときは度肝を抜かれた。しかし、対決相手の柱谷も今ごろ、同じように困り果てているはずだ。
オレンジソースをかけるか? 蜂蜜で煮るか? いや、肉料理を真似てはダメだ。パティシエとして、デザートの手法で戦わなくては。
チョコレート。思いつくと同時に、寺田は動き始めていた。細く刻んで下茹でし、柚子のジャムで煮る。飴状に煮詰まったジャムが絡んだところで室温に冷まし、チョコレートをかける。ビター、ミルク、ホワイトの3種類を試した。
……おいしい。だが、ダメだ。歯ごたえは面白いが、柚子の風味が強すぎる。これではよくあるオレンジピールのチョコレートとさほど変わらない。もっと、ダチョウを活かすものでなければ。
卵なら、プリンでもなんでも作れるというのに。そう愚痴ろうとした寺田に、瞬間、天啓が走った。そうだ、プリンだ。同じタンパク質だ、できないはずはない……!
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