05-昆虫

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 棒状の身体をくの字にまげて、宇宙生命体が疑問を呈する。 「しかし、サンプルの解析結果では良好な数値を得ていますよ。知能は十分に高いはずです」 「確かに、スペックの低い生命体ではありません。ですが……彼らには致命的な欠陥が」  なんでしょう、と身体の透明度を高めた宇宙生命体に、カマキリは静かに告げた。 「感情、です」 「感情! 理性を持たぬものの行動原理!」  宇宙生命体はゼリー状の身体をこよりのようにねじり上げ、三倍近い身長になった。カマキリは、触覚の先を小さくこすり合わせる。 「はい。彼らは自己決定や世界認識に、いまだ感情を使用しているのです。彼らの浮かべる表情は、我々のように意志や計算結果を伝えるためのものではなく、感情の発露なのです」  カマキリの言葉を聞きながら徐々に元に戻った宇宙生命体は、まだねじれの残る身体の上部先端を小刻みに震わせた。 「では……、彼らの主催する戦争や略奪は『意思』を尊重していないということ、ですか?」  宇宙生命体の言葉に、カマキリはうつむいた。長い触角をだらりと下げる。 「……彼らは『意思』を知りません」  宇宙生命体は、電子レンジにかけたゼリーのようにトロトロと溶け崩れた。最大級の衝撃。     
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