05-昆虫

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「なんと……。自分の生まれた意味も、為すべきことも、死にゆく理由も知らされぬまま、彼らは存在し続けている、というのですか……」 「はい。生まれたときに与えられている記憶が、非常に少ない。彼ら流の感情を模して言えば『哀れ』に他なりません」  床面に溶け出した状態のまま徐々にゲル化する宇宙生命体に、カマキリは手招くように鎌を振った。 「そこで彼らは、自ら『意思』の代替として、神と呼ぶものを想定し、信奉しています」 「その、神なるものは『意思』とは……」 「遠い存在です。誤認や無理解の賜物と言ってもいい。解釈もさまざまで統一されてもいません。けれど、人間自身が作り上げた神だけが、彼らの存在を唯一、容認しているのです」  ようやく棒状に戻った宇宙生命体はしかし、両先端を床につけてぐったりとしている。 「この星には、他に『意思』を与えられぬものがいますか……?」  カマキリはゆっくりと首を振った。 「そうですか……。それは唯一の救いとも言えますね」  カマキリは洞の奥に向かい、一匹のクマムシを抱えて戻ってきた。 「人類の詳細なデータをインストールしてあります。どうぞご参考に」  先端をくるりと振って謝意を表し、宇宙生命体はゲル状の身体にクマムシを取り込んだ。ふと、思いついたようにすっくと直立する。     
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