06-イチゴスプーン

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06-イチゴスプーン

「いやさ、知らんかったのよ実際。まさか、あとでそんな大問題になるなんて」  バルコニーの手すりに頬杖をついて下を見下ろしながら、翔太は申し訳なさそうに、それでいて少し不満そうに言った。 「そんな、あとで見て分かるようになんて意識しないでしょ普通」  傍らに立つ人物に視線をやって、翔太はため息をつく。 「そうですね、ダイイングメッセージを残そうとする方もたまにいらっしゃいますが、むしろ、そうした場合のほうが気づかれずに処理されてしまうもので……不思議なものです」  白っぽい服の人物はそう言って、ふふ、と笑った。  一人暮らしの大学生の部屋が荒らされ、住んでいた大学生が大量のパンを喉に詰まらせて死んでいた。財布や通帳などは残っており、部屋から持ち去られたものは確認できなかったが、被害者の母親があることに気づいた。  息子の翔太はイチゴアレルギーです。あの子が自分でこんなスプーンを持っていたはずがない。     
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