08-タケコプター

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08-タケコプター

 正式名称はテラフライヤーというのに、すっかりタケコプターで定着しているこの商品。昔の漫画に出てくる似たような架空の道具だそうだが、俺は読んだことがない。今日び、わざわざ古い漫画なんて読むのは年寄りのインテリ層くらいのものだろう。  個人が空を飛ぶための道具は、21世紀初頭には既に存在したという。そんなに昔から、と驚いてしまうが、当時の道具は大きくて重く、爆発の危険がある燃料を搭載した上に風を受けるための布を張る必要があったというから大掛かりだ。フィルム状の本体を背中に貼れば済む現代のタケコプターは、その手軽さから爆発的に普及することとなった。  航空法の改正が間に合わず、メーカーが増産体制の拡充を口実に一時生産を取りやめたことも記憶に新しい。なし崩し的に広まってしまった後だったから、各国政府も容認せざるを得なかったというのが実情か。とはいえ、人間が走る程度の速度しか出さず、高度も頑張って300メートルがせいぜいだから、空港周辺さえ気をつければ飛行機との接触事故を心配する必要はそれほどない。むしろ、地面を歩くことが減ったおかげで、地上での交通事故や転落事故は劇的に減った。     
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