01-料理対決

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 対決当日、審査会場。料理界のドンと呼ばれる極川流水を筆頭に、銘食会の重鎮たちが席を連ねる。何名かの雑誌記者とTVクルーの姿も見えた。  銘食会の特設厨房で、寺田は試行錯誤を繰り返したレシピを完成させた。冷やした器に盛り付け、オーストリッチを敷いた盆の上に乗せる。仕上げにダチョウの尾羽を飾った。  完璧なはずだ。下処理したダチョウの胸肉と肝臓をフードプロセッサーにかけて絞り、生クリームと少量の卵を合わせてホイップ、低めの温度で柔らかく蒸したものだ。甘さは控えめにし、使うバニラも風味を殺さない程度に抑えてある。肉の臭みだけを消して風味を活かす方法を見つけるのが、一番の難関だった。ダチョウに最も合うバニラを探して、寺田はここ数週間、ヨーロッパ各地や原産国アフリカを飛び回ってきたのだ。この2ヶ月で、6キロほど痩せた。  あとは、相手の出かただけが気がかりだった。柱谷が、この難題をどう料理してくるのか。対決台で向かい合った敵の姿は、思いのほか涼しげだった。自信の表れだろうか。先攻、柱谷の料理が披露される。 「モンブランです。風味を活かしながら、独特のもっちりとした歯ごたえを残しました。生地にも練りこんだ『イチョウの実』の香りをお楽しみください」     
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