十七色短編集

02-怒り

　そんなもん俺が知るかーっ！　っていうかなんで鏡なんだよ鏡！　しかもお前これ、破魔の鏡じゃん。よりによって破魔だよ破魔！　ちょ、おまっ、これ、結構重要な問題なんですけど！　こんなん持ってたら俺、魔法使えないじゃん！　いいよお前は、頭使わないでバカみたいにそのでっかい剣振り回してればいいんだから。え？　なに？　剣にも魔力がある？　バカかお前は！　っちゅーかバカなんだったなお前は！　お前がちょっと気合かまして剣がボーとかたき火程度に燃えるのと、俺が魔物まとめてガンガン燃やして消し炭にするのと、どっちが大事だと思ってるわけ？　っていうか逆に、俺が魔法使えないのと、お前の剣がボーとか燃えないのと、どっちがよりヤバいと思ってるわけ？　やだよ俺魔力使えない魔法使いなんて。いい年こいてお姫様扱いじゃねぇか。恥ずかしいだろ！　っていうか首からこんなやって鏡ぶら下げて歩いてること自体が既に相当恥ずかしいだろ！　は？　おいふざけんなお前、似合いますじゃねーだろコラ、より魔道士らしいってどういうこった。それじゃまるで普段の俺が魔道士らしくないみたいじゃねぇか！　あーあーあー、そーですかそーですか。お前は普段から、魔法使いなら緑のトンガリ帽子かぶれとか、先っちょに星のついた棒切れでも持ち歩けとか、そういう思いで俺を見ていたと、そういうことなんだな！？　よーしわかった、そうまで言うなら俺にも考えがある。うるせえ、いまさら媚びても遅いんだよ。あのなぁ、鏡ってのは魔力を跳ね返すだけじゃねぇんだよ。それ自体が魔力源になってんだよ。こいつに俺の最大魔力注ぎ込んだらどうなると思う。吸われます？　ああ吸われるよ魔力は！　っつーか吸わせるんだよ魔力を！　めいっぱい吸わせたところでこいつの魔力ごと反転かけたらお前、どんだけの威力で暴発すると思ってんだ？　ああいいよ、お前の言うとおり、この鏡ぶら下げてグリフォンだかなんだかの前に立ちすくんでやるよ。敵さんの魔法ハジいてやるよ。その代わりなぁ、お前のお目当ての財宝からなにから、まとめて全部吹っ飛ばすからな！　ダイヤだろうがルビーだろうが金塊だろうが、残らず蒸発しちまうからな！　ってああっ、引っ張るなバカ！　だったら最初からお前が持てって、っていうか痛、いてててバカ痛ぇよ首のヒモ！　ヒモ！　っでぇだったら最初からお前が持ってりゃ、って、あ……。落としやがった……。