03-坊主

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03-坊主

 カエルには毛がない。毛がないということは坊主ということで、なるほど、確かによくよく見れば、何かを悟ったような顔をしている。カエルといえば古くから柳の下で、柳の下には幽霊がつきものだから、案外、向こう側とこっち側の行き来のしかたを知っているのかもしれない。  けれどそのことと、カエルのお尻に爆竹を仕掛けて遊ぶのとは関係がないだろう。いくら悟りを開いているからといって、むやみやたらに爆破していいというものでもあるまい。乾いた爆竹の音は釣りの妨げにはならないから、私は黙って、一向に沈まない浮きを眺めている。餌が流れてしまったらしい。食べるための釣りではないから、坊主でもいいのだ。私は近くの石ころをひっくり返して、ザザムシを捕らえて針につけた。  投げた針が水に落ちるのと、爆竹の音が重なった。なんだか派手に着水したようで、おかしな気持ちになる。微笑を浮かべていると、浮きがかすかに動いた。魚にしては小さいから、ザザムシが暴れているのだ。ヤツには2本の毛があるから、きっとまだ現世に未練があるのだろう。     
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