04-雑草

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04-雑草

 はじめてその部屋の前を通りかかったときの印象は、おいここの住人ちょっとアタマおかしいんじゃないか? だった。  だって、わざわざ植木鉢に、雑草植えてるんである。雑草。しかも、なんかいろんな種類の寄せ植えなんかしてたりして。プランターいっぱいに、ススキみたいのがボウボウ生えてたりもしていた。  それが、世に言うハーブだったことを知ったのは、その部屋の住人と付き合いだしてからだ。俺は部屋を訪れるたびに植木鉢を雑草だと言ったし、彼女はそれを聞くたびにプリプリと怒った。 「これがミント、これがフェンネル、これがディル、これがレモングラス! もう、忘れないでよね!」  そう言って葉を少し揉んでは、俺に嗅がせるのだ。ディルやフェンネルとやらはよくわからなかったが、なるほど、ミントは歯磨き粉の匂いがしたし、レモンナントカはススキのくせに確かにレモンの匂いがした。  彼女の部屋に行くと、いつもハーブティーを飲まされた。ご機嫌そうな彼女には悪いが、俺には枯葉の味にしか感じられない。俺の無理やり作った笑顔を見ると、彼女は喜んで、また新しいハーブティーを買ってきてしまうのだった。     
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