04-雑草

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 雑草にしか見えない植木鉢を前に、彼女はよく雑草と戦っていた。いっそのこと全部かわいがってやれと俺が言うと、やっぱり彼女はプリプリと怒った。 「葉っぱの形がぜんぜん違うでしょ!? こっちがカモミール、こっちはただの雑草」  植えたばかりだというカモミールの苗は、周りの雑草よりひ弱で、ヒョロヒョロとしていた。いつものように葉の匂いを嗅がせてくれないのは、花にしか香りのない種類だからだそうだ。 「俺は、お前の髪の匂いのほうが好きだよ」  そう言ったことを、彼女は覚えているかどうか。リンスにもハーブティーを使っているとか何とか、そんな話で忘れてしまったかもしれない。カモミールの花は、俺の目にはビンボウ草と区別がつかなかった。  秋が来て、冬が来ると、植木鉢はほとんどみんな枯れてしまった。一年草が多いからしかたがない、と彼女は言ったけど、彼女の気持ちまで一年で枯れるだなんて、俺は予想だにしていなかったんだ。気がついたときには、彼女は他の男の部屋に移り住んでいた。     
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