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【序章】 いつもと変わらない日常
少し古びた小さなオフィスビルに、今回の主人公。
『安部 悠一(アベ ユウイチ)』が務める会社があった。
「売上だけじゃなく、利益を出さないと会社は成り立たないんだよ。」
そういっているのは、悠一の上司である田中である。
悠一の勤める会社は、SES(System Engineering Service)をメインに事業を行っている会社だ。
「ですが、要員さんにも生活があります。上位会社からもらってる金額から20%を引いた額なんて、いくら何でも生活できませんよ。」
「いいか!!この業界は、人は商品なんだ!商品に情入れてしまったら、会社の売上や利益がなくなるんだよ。それとも、お前の給料を削ってもいいのか。」
「そ、それは。」
「だったら、一人でも多く案件に人を入れろ。」
社会的にハラスメントが問題視されている中、このような会話が当たり前のようにあるのだ。
殆どの同期や後輩が辞めていく中、悠一だけはチャンスがあることを信じて業務を行っているのである。
「わかりました。スミマセン。これから、MMT社との打ち合わせがあるので。」
「とっとと、行ってこい! 案件の詳細が分かったら、メールしろ。」
「わかりました。」
田中にどやされながら悠一は、MMT社との打ち合わせのため渋谷に向かった。
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