【序章】 いつもと変わらない日常

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ところ変わって、高層オフィスビルのワンフロア。 ここには、もう一人の主人公『阿部 佑一(アベ ユウイチ)』が務めている。 「阿部先輩、凄いです!今月も売り上げ、利益共に達成なんて!」 そう言ってきたのは、佑一の後輩である佐藤だ。 「当たり前だろ。営業は両方達成してこそなんだよ。」 「でも最近、プロジェクトに入ったはいいんですけど、話と違うだの、俺のやり方があるだの我儘な要員が多いんですよね。」 彼らが務めているのは、大手のSIerであるため技術者を集めて顧客のIT業務改善などを行ったりしている。 「先輩。先輩は、どうして売上も利益も両方達成できてるんですか。」 「簡単だよ。上からもらう額は、決まってる。決まった予算の中で、スキルを持った安価な要員を充てることと、下に払う単価を下げるんだよ。そうすれば、売上を確保しながら、利益を出せるんだよ。」 「なるほど。でも、下に払う額を下げるって大丈夫なんですか?」 「大丈夫だよ。大体の会社が要員の原価にプラスで10~20%、もしくは、20万ほど乗せてきてるのは経験で分かる。そこをうまく衝くのが方法だよ。それでも、文句を言うようなら切ればいいだけの話だよ。」 「そうなんですね。でもそれって、いいんですかね?」 「使えない要員は、さっさとリリースしたほうがいい。お客様にも迷惑が掛かるだろ。それに、使えない要員の単価なんて払いたくないし。悪いな。これから俺、渋谷で打合せなんだわ。」 「すみません。付き合わせてしまって。」 「気にすんな。じゃぁ、行ってくるから。俺の担当要員分の注文書と契約書頼んだ。」 「ぇ!先輩、そんな無理ですよ!!」 佐藤の言葉を無視して、佑一は鞄を手に外出して行った。 この後、二人の「ゆういち」に待ち受ける運命を誰も知らないのであった。
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