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【第1章】 亡くした番号
「安部さん。先月もお話をさせて頂きました通り、御社からご紹介頂いた要員の井上さんの勤怠についてです。ほぼ毎日と言っていいほど、遅刻をされますし、タバコでの離席も目立ちます。元請様からも早急に交代を言われました。」
「申し訳ございません。ですが、井上はスキルと経験があります。こちらから厳しく注意を致しますので、交代だけは。」
「どんなにスキルと経験をお持ちでも、パフォーマンスを発揮して頂けないことには、こちらとしてもお客様へのフォローが出来ないんです。」
「承知しております。井上には、私より遅刻の原因をヒアリングし、回答をさせて頂きますので。」
「お手数ではありますが、よろしくお願いします。」
今回、悠一がMMT社に呼び出されたのは、担当している要員である井上の勤怠についてだった。
井上は、有名保険会社のシステム刷新プロジェクトや新規システム開発などに携わってきたベテラン。生命保険業務フローを理解し、経験のある力のある要員だ。
そんな井上ではあるが、重度のヘビースモーカーであり、1日に2箱を吸わないと仕事が出来なくなる。
悠一は、以前から井上に対して注意をしてきてはいるが、どこ吹く風のように聞く耳を持ってもらえない。
案件の選り好みも激しいため、社内の営業が皆困り果てて悠一の下へ来たのである。
かなり我がままな井上ではあるが、悠一は井上を慕っている。
それを分かっているのか、井上も営業の経験しかない悠一に開発についてなどを時々教えているのである。
井上の話で、他案件の話などできる状況ではなかった。
悠一は、田中に今日の打合せの内容をどのように伝えるか、スマホを片手に頭を抱える悠一。
とりあえず、会社に戻るために駅へ向かって歩き出した。
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