【第1章】 亡くした番号

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目の前には、じーっと悠一を見つめる店主の顔、驚いた悠一は、椅子からずり落ちた。 その際に、飲みかけで残っていたコーヒーが悠一のズボンに零れた。 「大丈夫ですか? スミマセン、驚かせてしまって…。火傷してないですか?」 焦る店主であったが、悠一は冷静に返事をした。 「もう冷めてたので、大丈夫ですよ。それに最近は、こういうことが頻繁にあるので慣れました。」 彼女と別れて以降の悠一は、本当についていない。 昨夜は、知らない酔っ払いに絡まれて最後には、吐瀉物をかけられた。 一昨日は、お客様先へ行く途中にカラスの糞をスーツにつけられた。 それ以外にも、駅の階段を踏み外し足首を捻挫。 知らないカップルの喧嘩に巻き込まれ、女性からビンタを喰らったり、腹痛で駅のトイレに駆け込んだ際に、トイレットペーパーがきれていたり。 地味であるが、ついていないのである。 「今日も上司に怒られ顧客に怒られ、仕事用の携帯を川に落とすし、終いにはコーヒを零す始末。本当に、ついてないんです。」 「そんなことないですよ。今日までは不運なことが続いていたかもしれません。でも、このタイミングからいい事が起こると思いますよ。」 そう言いながら、微笑みかけてきた店主を見て、     
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