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「はい、そのままで頂きます。あ、一口では飲みませんし、追い水もちゃんと用意しましたから」
まぁ、そんなメチャクチャな飲み方は瀬田に限ってはしないだろう。
何よりも、瀬田は自分よりもずっと酒には強いだろうから、余計なお世話だ。と秋川は思った。
瀬田はまるで、ハチミツかシロップかを口にした様に蕩けそうな表情で、ショットグラスの中身を半分程飲んだ。
「美味しい。すごく美味しいです・・・」
ウットリと、つぶやく瀬田の声ですら蕩けていた。
「ラフロイグって確か、古代ゲール語で『広い湾の美しい窪地』って意味なんだよな?そして、ウイスキーはウシュクベーハー、『いのちの水』が語源だ」
「へぇーそうなんですか?慎一さん、物知りですねぇ・・・」
「笹さんから聞いたんだよ。おれが知ってる訳ないだろう?おまえよりもウイスキー、飲まないのに」
瀬田へと、如何にもな感じで披露してやれば、少しは驚くかも?と思っていた秋川だったが、手放しで感心する瀬田に、天然入ってるのは一体どっちの方だよ?と拍子抜けをした。
「・・・・そう言えば、大丈夫でしたか?」
「え?何が?」
不意に真顔になった瀬田に突然尋ねられ、秋川はグラスを片手に聞き返す。
「『住のゑ』に行ったんでしょう?誰かから声掛けられたりされませんでしたか?」
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