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「やっぱり、おれにも味見させてくれないか?」
と、瀬田に言った。
「あ、はい!じゃあ、グラスを持って来ますね!!」
某居酒屋も斯くやの、よろこんで!!の勢いで、ソファーから立ち上がろうとした瀬田の腕を、秋川は捕まえた。
「これでいい。おまえが飲ませてくれ」
「え・・・?」
「ほんの少しでいいから」
笑って秋川は目を閉じる。
程なくして瀬田の手を右頬に、唇を唇に感じた。続けて極僅かに開けていた口元に、熱い液体が流れ込んでくる。
それは秋川が望んだ様に少量だったが、秋川の舌を、喉を焼いた。
秋川がウイスキーの匂いを辺りに零しながら、つぶやく。
「思ってたよりも、美味いな」
いやしくも、スコットランドはウイスキーの聖地とも呼ばれるアイラ島のシングルモルトに対して、随分な言い草だったが、秋川にしては十二分に褒めているつもりだった。
「慎一さん・・・」
「もう少しだけ、くれないか?」
「いくらでも、飲ませてあげますよ」
満面の笑みで応える瀬田へと、秋川は真顔で断った。
「そんなにはいらない。酔っ払うから」
その言葉に従い、今度も極めて少しだけ、瀬田は秋川へと口移しでウイスキーを飲ませた。
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