2/2
前へ
/2ページ
次へ
雨の日に図書館に出向いた。 入り口の傘立てに傘を入れる。 私の傘は黒い地味なものだが、よく見ると千鳥格子の模様がある。 ふと横を見ると、隣の傘も偶然同じものだった。 よく売っている傘ではないが、たまにはこういう事もある。 帰りに間違えて持ち帰らないように気をつけよう。 私はそれぐらいの事を考えながら図書館に入った。 図書館を出ると、隣の傘は消えていた。 私はコンビニエンスストアに向かう。 店の傘立てに傘を入れると、少し離れたところにまたあの傘があった。 偶然が続くものだと思いながら中に入る。 しかし中を見渡すが、私以外の客はいなかった。 どういうことかと首を傾げたが、店員の「いらっしゃいませ」という声に我に返って買い物をすることにした。 店を出る時にどうにも気になったが、傘立てには、私の傘しかなかった。 これはいよいよ奇妙だった。 コンビニエンスストアから出て、本屋に向かう。 何となく厭な気分がして、本屋では傘を持ち歩いていた。 三冊程目当ての本を購入して外に出ると、雨は止んでいた。 雨上がりの空を見上げると先程の気分は嘘のように晴れ、先程の奇妙な出来事は単なる取り越し苦労のような気がした。 意気揚々と家に帰り、すっかり乾いた傘を自宅の傘立てに入れようとした。 傘立てには、濡れたあの傘が既に立てかかっていた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加