1人が本棚に入れています
本棚に追加
雨の日に図書館に出向いた。
入り口の傘立てに傘を入れる。
私の傘は黒い地味なものだが、よく見ると千鳥格子の模様がある。
ふと横を見ると、隣の傘も偶然同じものだった。
よく売っている傘ではないが、たまにはこういう事もある。
帰りに間違えて持ち帰らないように気をつけよう。
私はそれぐらいの事を考えながら図書館に入った。
図書館を出ると、隣の傘は消えていた。
私はコンビニエンスストアに向かう。
店の傘立てに傘を入れると、少し離れたところにまたあの傘があった。
偶然が続くものだと思いながら中に入る。
しかし中を見渡すが、私以外の客はいなかった。
どういうことかと首を傾げたが、店員の「いらっしゃいませ」という声に我に返って買い物をすることにした。
店を出る時にどうにも気になったが、傘立てには、私の傘しかなかった。
これはいよいよ奇妙だった。
コンビニエンスストアから出て、本屋に向かう。
何となく厭な気分がして、本屋では傘を持ち歩いていた。
三冊程目当ての本を購入して外に出ると、雨は止んでいた。
雨上がりの空を見上げると先程の気分は嘘のように晴れ、先程の奇妙な出来事は単なる取り越し苦労のような気がした。
意気揚々と家に帰り、すっかり乾いた傘を自宅の傘立てに入れようとした。
傘立てには、濡れたあの傘が既に立てかかっていた。
最初のコメントを投稿しよう!