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母に朝顔柄の浴衣を着付けてもらう。
紺色の地に、赤やピンクの朝顔がちりばめられた浴衣は、私のお気に入りだった。
幼稚園の年中さんから着ているそれは、小学二年生になった私には、とっくに小さくなっていた。母が買い換えようと言ってくれたが「今年はまだいい」と断ったほどだ。
母が気を利かせてできる限り裾出しをしてくれたが、それでもつんつるてんだった。
文庫結びの作り帯も買ってくれたが、それにこのつんつるてん具合は合わないと、昨年まで使っていた稚児帯を結ぶ。少しでもお姉さんぽくなるようにと、母は輪ゴムを使って花のようにしてくれた。
それを三面鏡に映して私は上機嫌だった、髪も結い上げて朝顔の絵が描かれたプラスチック製の風鈴が付いたかんざしを挿してくれる。
「はい、これで完成」
そう言って差し出してくれたのは、母が作ったポシェットだ。中を確認すると、猫の顔を模したがま口が入っている。
「いつのように千円ね。計画的に遣うのよ?」
「うん!」
縁日に行く時、母はいつも百円玉を十枚、つまり千円を用意してくれる。私はその中からゲームをしたり、お菓子を買ったりする。綿菓子だって一袋五百円はする、その千円がいかに大事か、この時ばかりは少ないと感じてしまう。
「じゃあ、行きましょうか」
紺地に白い百合を染め抜いた浴衣姿の母が手を差し出す、私はその手を握り締めた。
九月五日は、氏神である水天宮の例大祭がある。その為の縁日が三日から行われていた。それに参加するのが毎年の楽しみだ。
でも、その年だけは少し違った。
夏の終わりの出来事は切なくて、私をほんの少し、大人にしてくれた。
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