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かつては参道としてにぎわった道は、今はただの一般道と変わらない。境内から先、四百メートルほど行ったところには一ノ鳥居があったと言うが今は無い、しかし今夜はそこまで屋台が道の両側に並ぶのだ。雑踏の中行って帰るだけでもかなりの時間がかかる。 「あっちゃん!」 行き過ぎる人に声を掛けられた、幼稚園からの友人の一人、菊地奈央(きくち・なお)だった。 水天宮自体は学区内だ、だから多くの友人とこうして祭りの夜に会うのは珍しい事ではない。例大祭の最終日、五日には子供神輿も出るから、皆この祭りは楽しみにしている。 「奈央ちゃん!」 一緒に巡ろうかと言う話にもなったが、奈央はもう帰宅するところだと言う、奈央の母の胸には小さい弟が抱っこ紐に収まっている。せめて少しは楽しもうと二人はゲームをすることにした、輪投げだ。二人が夢中になっている間、後ろで二人の母が会話を始める。 「美幸さん、今年も素敵な浴衣ね」 「ありがとー」 「涼し気でいいけど」 「実際には暑いわよね」 笑う奈央の母は、ノースリーブのワンピースだ。 「あっちゃんの浴衣は、ちょっと短いかなあ?」 「そうなのよお。買い換えようって探しに行ったんだけど、なんか気に入った柄がなかったみたいで、これでいいって言い張るのよぉ」 「で、自分は買ったんだ」 「ご名答」 美幸はうふふと誤魔化すように笑う。 「でも、あっちゃんの可愛いもん、判るわ。子供すぎず、大人すぎなくて。あっちゃんに似合ってるし」     
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