序章/星の巡り(青海舞香……time line.-6)

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 兄貴すら『世の中には説明できない不思議な事もある』だなんて口から漏らしやがった。こんな子どもにびびってるなんざ、情けなくて反吐がでそうだ。  舞香は教えられたとおり、ガラスパイプの下にライターを構えて火を点し溶かしていく。  と、その時、事務所の扉が開くとスキンヘッドの男が事務所内に入ってきた。 「おい、兄弟。親父が呼んでる。お前も連れて二人で来いってさ」 「はっ、俺も、ですか? 用があんなら俺に直接電話くれりゃいいのに、どうしてオヤジ、兄貴にだけ連絡寄越したんですかね」 「俺が知るかってんだ。つーか舞香ちゃん、こんな時間にこんな場所でなにやって……おい、兄弟?」  男は急に声のトーンを落とすと、大海の襟首を掴み上げ顔を凄めた。 「てめぇ、舞香ちゃんになにやらせてやがんだ? なぁオイ?」 「い、いや、売人してんのにシャブやったことがないっつーんで……あっ、舞香ちゃん、もう吸っていい頃合いだ」  大海に言われたとおり、舞香は気化して白煙となったそれを吸い込んでまう。 「兄弟、俺が覚醒剤(シャブ)でどうなったか知ってるよな? 一番間近で見てきたよな、ああ!?」  襟首を掴む力を強めた男は、そのまま大海を突き飛ばして地面に叩きつけた。 「ふざけてんのかてめぇ。俺があれだけ狂ってたのをあーんなに近くで見ておきながら、仲間にやらせてどうするつもりだ、ええっ!?」 「いや、あれは兄貴の使い方のせいであって普通はああはなりませーー 」 「んなこたぁ聞いてねぇ! 俺のこと舐めてんのか、おい? 漬ける相手間違えてんじゃねぇぞクソ野郎ッ!」  男はそう言い終えると、舞香に顔を向けた。 「舞香ちゃん、シャブだけはやめとけ」 「あ、阿瀬(あぜ)さん、こんばんは。お久しぶりですね。でも、案外拍子抜けでしたよ、これ。“ああ、こんな程度の物なのかー”って感じですよ。たしかに目は冴えましたけど」 「最初は誰もがそう思うんだ。舞香ちゃんなら変な野郎に漬けられたりはしないだろうけどよ、もうそれはやめときな。ぜったい、後悔するから。やるならせいぜい葉っぱくらいにしとけ」  阿瀬が舞香に忠告するのを聞きながら、大海はゆっくりと立ち上がった。
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