フウセンカズラの恋

トラウマ

「ポップコーン食べると、オシッコが出づらくなるんだぜ？」

元彼のくだらないうんちくを唐突に思い出した。

彼の部屋の2人がけのソファで、レンタルした恋愛映画を見ようとしていた時の会話だ。
私はへぇーそうなんだと言って、ディスクをプレイヤーにセットしかけた手を止め、振り返る。
「映画館で必ずポップコーンが売ってるのはそういう理由なんだよ」と得意げに話す彼に、
「ーーは、本当になんでも知ってるね」と目を見開いて笑顔を投げかけた。

洋画が好きだった彼は、レンタル店に行くと迷わず洋画の最新作品のコーナーへと向かい、映画を選んでいた。
その後、レジの横で見つけたポップコーンを手にとっていたのは知っている。
なにがそんなに楽しいのかニヤニヤしながらそれを会計をしていた彼が、しかしながら恋人と恋愛映画を観る前にそんな事を言いだすとは夢にも思うまい。

プレイヤーに向かい直してディスクをセットする。
得意げな顔のまま映画を鑑賞し始めた彼と食べたポップコーンの味は、味気のないしなしなとしたものだった。