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自分から切り出したクセに、1人になった寂しさから一度だけ、やり直したいと泣きながら電話をした事があった。
「戻ったところでもうダメなんだよ。寂しいのはおれもだ。でももう無理だろ。もうケンカするのは嫌なんだ。」
部屋でゆっくりしていたのだろうか。電話口から途切れ途切れに彼の好きな洋楽が流れていた。
「でもーーだって寂しいんでしょ?だったらやり直そうよ。ケンカしたらまた仲直りすればいい。私はまだーーと一緒にいたい。」
はぁ、とため息混じりに返す彼の言葉には、苛立ちが含まれていた。
「沙耶がいつも言いたい事を我慢していたのをおれは知ってたよ。知ってて気づかないフリをした。それに対して沙耶が怒っていたのもわかってた。
でも、言わなかったじゃん。言わないからおれもどんどんつけあがったし、わがままになるのは当たり前だ。そうやって溜め込んだのが一気に爆発する。その繰り返しだったじゃないか。不満を我慢して後から言い出したって遅いんだよ!」
「ーー・・・・・・そ、れはっ。わたし、はっ!」
図星だった。「嫌なこと思い出しちゃったよ。」
ふっと笑って、立ち上がる。
こぼしたポテチを拾い、掃除機をかけた。洗ったシーツをベランダに干して、布団もついでにと、持ち上げる。
「布団は、コインランドリーか。」
わたしが住むマンションから歩いて数メートルの近所に新しくコインランドリーが出来た。白いうさぎがシャボンの泡と戯れているピンク色の看板だ。
大きめのランドリーバッグに布団を詰め、その辺にあった紺のTシャツとジーンズに着替え、サンダルをつっかける。
外に出ると、太陽が照りつけるカラッとした青空が広がっていた。
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