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 掴まれた手首が、熱い。重なった手のひらも。  だが、それよりももっと熱いのは、喉の奥からせり上がってくるものだ。  見抜かれていた。  僕の不安も焦りも、ちゃんと見てくださっていた。  その上で、そんな僕に、こうして置き土産を残していってくれるのだ。このお師匠様は。  『必ず戻る』という、約束の言葉を。 「あー、あれだな。『安心して待ってろ』っつーのは、お前には良くないな。ちょっと言い方変えるか。——適度に鍛練を積みながら待ってろ。いいか? 適度に、だぞ。やりすぎは厳禁だからな。わかったか?」 「は……ぃ」 「あ? 聞こえねぇ。ちゃんと返事しろ」 「はいっ」 「ん。それでいい」  涙の塊を飲み込みながら声を張り上げた僕に、にぃっと唇を引き上げ、満足げに笑った原田様の手が伸びてきた。  頭に乗ったその手は、少々乱暴にそこでぽんぽんと動き、「くれぐれも無茶だけはするな」という言葉とともに離れていった。  僕はそんなに無茶をするように見えるのだろうかと思ったが、それは口には出さず。代わりに、別のことを申し上げることにした。 「大丈夫です。しっかりと肝に銘じましたから。原田様こそ、お気をつけられてくださいね。後先考えずに敵陣に突っ込んで隊の皆様にご迷惑……いえ、ご心配をかけたりなさらないか、かなり心配です」  〝置き土産〟への返礼を、笑顔に乗せて。
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