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 驚き、声も出せない僕に、原田様はすぐに断髪の理由を教えてくださったが、それはほぼ、僕の懸念通りの内容だった。  寛永寺で(さき)大樹公(だいじゅこう)様の警護にあたられていた新選組の任が、今朝、突如として()かれ。同時に、来月一日付けで甲州(こうしゅう)への出陣の(めい)が下されたという。  さらに、その出陣に際して洋装の軍服が支給されるということで、他の隊士の皆様ともども、ご下命(かめい)を受けた直後、すぐに断髪に踏み切られたとのことだった。 「あと、四日」  間近まで歩みを進めておられる原田様に聞こえぬよう、低く呟く。  今日を数に入れても、あと四日。ご出陣まで、もうそれだけの猶予しか、僕には残されていない。  たった四日では、このお方に認めていただける僕になれることなど、到底無理だというのに……。  絶望なのか、諦めなのか。どちらとも取れる乾いた笑いを胸中でひらめかせた僕の頭上で、(うぐいす)が軽やかにひと鳴きした。
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