58人が本棚に入れています
本棚に追加
驚き、声も出せない僕に、原田様はすぐに断髪の理由を教えてくださったが、それはほぼ、僕の懸念通りの内容だった。
寛永寺で前の大樹公様の警護にあたられていた新選組の任が、今朝、突如として解かれ。同時に、来月一日付けで甲州への出陣の命が下されたという。
さらに、その出陣に際して洋装の軍服が支給されるということで、他の隊士の皆様ともども、ご下命を受けた直後、すぐに断髪に踏み切られたとのことだった。
「あと、四日」
間近まで歩みを進めておられる原田様に聞こえぬよう、低く呟く。
今日を数に入れても、あと四日。ご出陣まで、もうそれだけの猶予しか、僕には残されていない。
たった四日では、このお方に認めていただける僕になれることなど、到底無理だというのに……。
絶望なのか、諦めなのか。どちらとも取れる乾いた笑いを胸中でひらめかせた僕の頭上で、鶯が軽やかにひと鳴きした。
最初のコメントを投稿しよう!