序 覚(さとり)

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 錆びた臭い。血臭がした。    初めて対峙した時、ぞくりと肌が粟立った。だから、関わってはいけないと思った。  僕とは、見てきた世界が違う。  息づく一挙一動の全てに、鮮血の(あけ)の色が纏わりついている。  そんな、危険な男だったから。決して関わってはならない。踏み込ませてもいけない。  だが、明確に引いたはずの一線を、気づけば自ら飛び越えていた。  そうして、僕はその手を取ったのだ。
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